「受け継ぐ」ことの本当の意味

『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)と、1990年代に超ヒットした『うしおととら』。時代も絵の雰囲気も違うけど、実はこの二つ、びっくりするほどよく似た「共通点」があるんです。特に「ワン・フォー・オール」(OFA)と「獣の槍」は、ただの武器や能力じゃなくて、物語の「ど真ん中」にある「受け継ぐ」っていうテーマの象徴として、すごく似た役割を持っています。

1. 「力」と「心」を受け継ぐこと

ワン・フォー・オール:受け継がれていくヒーローの心

OFAは、初代からデクくんまで、ずーっと昔のヒーローたちの「力」と「平和を守りたいっていう心」をためて、受け継いできた”個性”です。ただ強くなるだけじゃなくて、昔のヒーローたちの「想い」そのものなんです。デクくんがOFAの中で昔の継承者たちと話すシーンは、まさに「心が受け継がれている」ってことを目に見える形にしたものです。

獣の槍:つながる魂の記憶

一方、『うしおととら』の「獣の槍」も、主人公の蒼月潮(あおつき うしお)が使うための、妖怪と戦う道具です。でもそれだけじゃなく、「白面の者」っていうラスボスへの「憎しみ」や「戦いの記憶」がたっぷりこめられています。潮は槍を使うたびに、自分の魂を獣に食べられそうになるんですが、同時に槍にこめられたたくさんの人たちの「想い」に助けられて、戦い抜きます。

似ているところ:すごい力の「代償」

どっちの「力」も、とんでもないパワーをもらう代わりに、「呪い」みたいな重すぎる「運命」を背負うことになります。OFAは(デクくんより前は)持ってる人の寿命をけずっちゃうし、獣の槍は使う人の心を獣に変えようとします。この「力をつかう覚悟と、その重さ」っていうテーマが、二人の主人公に超ヘビーな試練を与えています。

2. 宿敵:「白」と「黒」のヤバすぎるラスボス

オール・フォー・ワン (AFO)

OFAと正反対の場所にいる存在。初代OFAの(ヤバい)お兄ちゃんで、とんでもなく長い時間を生きる「悪のシンボル」です。OFAが「あげる」個性なのに対して、AFOは「奪う」個性。デクくんと死柄木の戦いは、このとんでもない兄弟げんかのゴールなんです。

白面の者

『うしおととら』の世界での、どうしようもない「悪」。日本をまるごと滅ぼそうとするヤバい九尾のキツネ。その強さと絶望感は、ヒロアカでのAFOの役割とそっくりです。「獣の槍」も、「白面の者」を倒すためだけに作られたものです。

どっちの作品でも、ラスボスは「ただ倒す敵」ってだけじゃなく、主人公たちが「受け継いだ力」が『なんで存在してるのか』っていう理由そのものなんです。

資料:「獣の槍」の呪い

「獣の槍」が潮にあたえる影響は、OFAがデクくんにかける負担とも比べられます。下のボタンで大きめのネタバレを含む獣の槍について表示します。

4. 運命の相棒:「とら」って?

喰うヤツと喰われるヤツ

『うしおととら』の物語の中心にあるのは、主人公・潮と、彼が蔵から出しちゃった大妖怪「とら」との関係です。「いつかお前を喰ってやる」が口グセのとらが、潮と一緒に戦ううちに仲良くなって、最後は自分の命をかけて潮と白面の者を倒すシーンは、このマンガで一番「キター!」ってなるアツいところです。

ヒロアカでの「相棒」

じゃあ、ヒロアカでデクくんの「相棒」は誰でしょう? 「とら」みたいに最初は敵みたいだった「かっちゃん(爆豪勝己)」かもしれません。デクくんとかっちゃんがライバルとして張り合い、ケンカしながらも、最後の戦いで一緒に戦う姿は、潮ととらの「妖怪と人間」っていう壁をこえた友情と似ています。どっちのコンビも、「いがみ合う二人」が「最強のバディ」に成長していくところが共通してますね。

5. 主人公を導く「師匠」たち

希望のシンボル「オールマイト」

デクくんにとっての師匠で、「平和の象徴」。OFAっていう「希望」の力をデクくんにあげて、彼を導く人です。オールマイト自身も昔、師匠から力をもらっていて、「『受け継ぐ』ことのつながり」を生き方で見せてくれる人です。

呪いの監視者「時雨」

『うしおととら』で潮を導くのは、「時雨(しぐれ)」っていうお父さんです。彼は潮に槍のミッションを教える師匠だけど、もし潮が槍の呪いに負けて「獣」になっちゃったら、すぐに殺すっていう「監視役」でもあります。オールマイトが「光」なら、時雨は「光だけじゃなく、呪いっていう影の部分も知っている」案内人と言えます。

6. 仲間の中に「内通者」!?

どっちの作品にも、主人公たちが信じてる「仲間」や「組織」の中に、敵がこっそり隠れているっていう、似たようなストーリーがあります。

ヒロアカの「内通者」

ヒーローを育てる日本一の学校「雄英高校」の中に「内通者(スパイ)」がいるかも…っていうウワサは、読んでてすごくハラハラしました。仲間や先生の中にウラギリモノがいるかもって思うと、ヒーロー社会が、実はもろいかもしれないってことも表していました(後で青山くんって分かりましたね)。

うしおととらの「裏切り」

『うしおととら』では、妖怪と戦う「光覇明宗(こうはめいしゅう)」っていう組織の一部が、白面の者が怖すぎて心が折れちゃって、獣の槍をこわそうとします。他にも、白面の者の分身が組織に入り込んで、中からめちゃくちゃにしようと、こっそり悪いことをします。信じてた仲間が敵かもしれないっていう話の作りは、ヒロアカの内通者問題とすごく似ています。

7. 「一人」から「みんな」へ:最後の戦い

デクくんも潮も、最初はデカすぎる力を自分一人でなんとかしようとして、仲間から離れようとしました。デクくんがボロボロの姿で一人戦った「黒いヒーロー」時代や、潮がどんどん獣に近付いていったのは、彼らが「受け継いだ」ものの重さに、一人で耐えようとした結果です。

でも、どっちの作品も最終的に描くのは「仲間の大切さ」です。デクくんがA組のみんなに連れ戻されるシーンや、潮が獣になっちゃっても、とらや仲間たちの声で自分を取り戻す姿は、「ヒーローは一人で戦うものじゃない」ってことを教えてくれます。

最後の戦いのカタチ

このテーマは、最後の戦いで一番盛り上がります。ヒロアカが、デクくんとヒーローたち、そして一般市民のみんなの「気持ち」を一つにしてAFO/死柄木に立ち向かう「みんなでの戦い」であるように、『うしおととら』も、潮ととら、人間たち、そして今まで敵だった妖怪たちまでが「チーム」になって、たった一体の「白面の者」に立ち向かいます。これは、「たった一人の悪いヤツに、みんなの気持ちで勝つ」っていう、共通のカッコよさです。

8. 二つの作品の比較

  • ① 力の継承と呪い: どっちの主人公も、すごい力を受け継ぐけど、それには重い「代償」(OFAの寿命問題や、槍の獣化)がセットになっています。力の重みは、『うしおととら』の方が「呪い」として、よりダークに描かれているかもしれません。
  • ② 宿敵との因縁: AFOと白面の者。どっちもラスボスとしてデカすぎる存在で、主人公たちが受け継いだ力の「存在理由」になっています。この因縁の深さは、どっちもマンガ史に残るレベルです。
  • ③ 仲間との絆: 最初は一人で戦おうとしがちな主人公が、仲間に支えられて「みんなで戦う」ことに気づきます。この「絆」の大切さは、どっちの作品でも一番アツいテーマになっています。

9. 物語の「オリジン」

『ヒロアカ』は「これは、僕が最高のヒーローになるまでの物語だ」っていうセリフで分かるように、デクくんの「始まり(オリジン)」をとっても大事にしています。それだけじゃなく、「死柄木弔:オリジン」みたいに、ヴィランやヒーローの「始まりの物語」が、「なんでそうするのか」っていう理由として、すごく大事に描かれます。

これは『うしおととら』も同じです。物語の途中で、なぜ「獣の槍」が作られたのか、なぜ「白面の者」が生まれたのか、その「始まり」がすごいスケールの過去の話として描かれます。この「始まり」が分かることで、今の時代の戦いに「これは運命だったんだ」って思わせる深みを与えています。どっちの作品も、現在と過去をつなぐ「始まりの物語」を、すごく上手に使っています。

10. 結論:『うしおととら』も一つの「オリジン」

『ヒロアカ』が『うしおととら』をマネしているわけではありません。でも、作者の堀越耕平先生が影響を受けた作品の一つである可能性は、めっちゃ高いと思います。

「すごい力を受け継いで、仲間と一緒に、受け継いだ力も使い宿敵を倒す」—この「これぞ少年マンガ!」っていうアツい『心』は、時代を超えて受け継がれた黄金律だと思います。デクくんがオールマイトから「オリジン」を受け継いだように、『ヒロアカ』もまた、『うしおととら』みたいなすごくて偉大なマンガたちから、「マンガのアツさ」を受け継いでいるのかもしれませんね。

うしおととら

  • 作者:藤田和日郎
  • 出版社:小学館(週刊少年サンデー連載)